空気清浄機(英語 Home air cleaner)とは、空気中に浮遊する目に見えない細かい粒子(花粉やハウスダスト等)や臭い(ペットや調理時等の臭い等)を取り除くことを目的としている空調家電製品である。空気清浄器と表記することもある。
空気中の微粒子や粉塵を除去することを主な目的とするのものは集塵機、においの除去を主な目的とするものは脱臭機と呼び分けることが多い。一般にいわれる空気清浄機は、微粒子とにおいの両方をバランスよくきれいにすることを目的としたものといえる。
ここでは主に家電としての空気清浄機について述べる。
家電の業界においては、ファン式とイオン式というように分類されてきたが、現在ではその性能の低さゆえ大手家電企業はイオン式から撤退している。原理の単純さと製作の容易さから、一時はオーディオメーカーも作っていたが、国民生活センターによるテスト等で性能の低さが明らかになり、また、イオン式を販売していた企業の広告が不当表示として排除命令を受けたことが決定打となって、さらなる消費者の買い控えの後押しをしたとみられる。
現在でも残るイオン式空気清浄機は、通信販売やインターネット上での販売など、限られた販売方法によって売られていることが多い。家電店ではほとんど見かけない。
現在ではこうした実状に合わない分類はほとんど行われておらず、家電店で販売されるものもほぼ100%がファン式のため、そのフィルターの違いや各種の付加機能を表示して説明を行うことが多い。現状にそくし、かつ一般市民にわかりやすい分類や呼称、また性能表示が求められる。
イオン式
イオン式は一定の距離をおいた電極に高電圧をかけることによって空中にイオンの流れ(放電)を作り、そこに入ってきた微粒子などを帯電させ、それを反対の電荷を帯びた電極に集塵する方法である(ただし、ここでの分類ではファンを用いないものに限る)。簡単には静電気の力で集塵すると考えて間違いではない(ブラウン管の表面が汚れるのと同じである)。電子式、または静電集塵式と呼んでいた企業もあった。原理からいってもにおいには弱く、基本的にファンがないことから、ごく近くの微粒子しかとれない。しかし、小型でデザインに優れたものもあり、好む人はいまだにいる。そうしたデザイン性の高い輸入品などが入ってきており、排除命令のことなどは忘れられる時期であることとあいまって、再び市場における機種数が増える傾向にあるようである。
連続運転をすることにより、長時間空中に漂う超微粒子をゆっくり時間をかけて少しずつ集塵することはできるが、比較的早く落下するサイズの微粒子の集塵にはまったくの無力である。消費電力が小さいメリットがあり、放電時に発生する微量のオゾンが消臭に多少の効果を発揮する場合もある(多量のオゾンは有毒である)が、すばやい脱臭は不可能である。多くのものはマイナスイオンを発生すると称するが、その健康効果についてはなんら明らかになっていない。電極の構造や配置により、わずかの風(電子風と称される)を発生させるものもあるが、多少の集塵効果のあるインテリアとしてわりきって考えたほうがよい。基本的には無音である(電極が汚れると若干の音がする場合もある)。
集塵電極にペーパータオルなどをかぶせ、汚れたらそれを交換する方式、あるいはむきだしの電極を使用し、汚れたら洗う方式などがある。帯電したホコリが素通りすることもあり、近くに壁などがあるとそれが付着して汚れることがあるので注意が必要である。汚れが多くなって電極が短絡すると危険である(ただし多くは安全装置が備えられている)。
原理からいって安価にできるはずであるが、いわゆる悪質アトピービジネスのような形で法外な価格設定がされているものが散見されるので、購入時には注意が必要である。
なお、ファン式とイオン式の切り替えタイプというものもあった。微弱・静音運転などのときにファンを止めてイオン式に切り替える方式だが、現在ではファン式に使われるモーターの高性能化によって、騒音・消費電力の両面ともイオン式に切り替える意味はなく、販売されているモデルもなくなった。
ファン式
ファン式は現在の主流となっている方式で、扇風機やエアコンと同じようにファンによって強制的に空気を吸い込んで、フィルターで濾過し、きれいになった空気を吹き出す方式である。使われるファンは、空気の押し出しに向くプロペラファン(扇風機などのファン)ではなく、吸い込みに適するシロッコファン(天井据付式の換気扇などに使われる)である。クロスフローファンを採用した機種もある。一昔前なら業務用として使われるような風量の豊富なものが多く出てくるようになった。
多くのファン式空気清浄機は、HEPA(ヘパ)と呼ばれる目の細かい不織布のフィルターで微粒子を集塵・濾過し、においについては活性炭で吸着する方法をとる。なかには、イオン式と同様な原理の電気集塵(多くはプラズマと呼ばれる)を併用しているものがある。放電部分で発生するプラズマ(低温プラズマ。実体は各種のラジカルである)を消臭やバクテリア・アレルゲンの分解に用いている機種もある。活性炭ではなく二酸化チタンなどの光触媒による消臭を採用している機種や、HEPAよりも目の細かいフィルターであるULPA(ウルパ)を採用したものもある。
なお、HEPA、ULPAともに、クリーンルーム用の清浄機に使われるような高性能フィルターである。HEPAよりランクが落ちるものは一般に高性能フィルターと呼ばれ、フィルターの繊維そのものが静電気を帯び、効率的に粉塵等を集塵できる静電フィルターなどがよく使われる。さらにグレードが下がると、ファイバーフィルターと呼ばれる高密度不織布等のフィルターが使われる。特殊な用途でなければ、一般に多く使われているHEPAで十分な性能が得られる。家庭用空気清浄機においてはULPAは過剰性能であり、それよりも風量を大きくしたほうが実効が高いため、近年は採用する機種はあまりない(その、風量を大きくする面においても、ULPAは空気抵抗が大きいため不利である)。
イオン式に比べて本体サイズおよび消費電力が大きく、騒音の点でも不利である。フィルターが汚れると交換しなくてはならない(ただし、交換不要の集塵フィルターを採用したモデルも出始めてきた)ため、ランニングコストもかかる。しかし、大風量運転時の騒音はしかたのないことであり、逆に微弱・静音運転のときの消費電力と騒音は、モーターにインバータ制御を採用した高級モデルであれば、イオン式と同等かそれ以下である。多くのものは風量のコントロールが可能であり、ほこりやにおいのセンサー、タイマー、リモコンなどを備えたものもある。マイコンを内蔵し、プログラムにしたがって各種の自動運転が可能なものも多い。
なお、家庭用清浄機で表示されている集塵効率などはフィルター単体の理論値・規格値であり、清浄機の性能を必ずしも表してはいない。クリーンルーム・クリーンブースなどに用いられる業務用や医療向けなどの特殊用途のものは、清浄機を使用したときの実際の性能を表示しているものがある(実際のクリーンルームは部屋の設計に清浄機が組み込まれており、単体の清浄機を使うことはあまりない)。
電気集塵式
業務用(とくに工業用)向けとしては、「汚れたフィルター」という産業廃棄物が発生しない電気集塵の空気清浄機(集塵機)が多く使われる。放電を利用するという点ではイオン式と同様だが、多くは電極の正負が逆であり、集塵効率を高めるため電極の数も多く、粉塵を帯電させる部分と集塵する部分が分かれている多段式となっている。イオン式とは異なり、通常はファンを用いている(よって、ファン式ではある)。放電に伴ってプラズマが発生することから、家庭向けではプラズマ式と呼ばれることが多い。基本的に電極を洗って再生使用するため、ランニングコストは低い。
イオン式と同様、これだけでは集塵のみの効果しかないが、脱臭フィルターを備えたものが家庭用としても販売されていた。現在はない。フィルターを用いたファン式の清浄機に、簡単な構造の電気集塵が併用されている場合がある(この併用タイプを現在では電気集塵と呼ぶことが多い)。エアコンに使われていることもある。
原理的にはフィルターを用いた清浄機よりも細かな粒子を集塵することができるが、すべてを集塵できるわけではない。すなわち、素通りしてしまうものもある。風量や粒子径によっても異なるが、一般に集塵効率はHEPAなどのフィルターを用いるものよりもよくない。よって、ファンなど本体内部も汚れやすい。ランニングコストが低くとも、手入れには手間がかかることは承知しておくべきである。
ちなみに、こうした集塵のみの方式に着目して分類すると、上記のファン式の清浄機(HEPAなどのフィルターを用いるもの)は、電気集塵に対して機械集塵と呼ばれる。フィルター式、またはフィルター集塵式ともいわれる。前述のプラズマなどを含め、こうした呼び分けが消費者の混乱を招いている。
そのほか、さまざまな特殊な仕組み・性能・付加機能を持たせたものがある。加湿器、除湿乾燥機、ファンヒーター、エアコンなどに空気清浄機能をもたせたものも多い。珍しいものでは、パソコンのベイに内蔵するものもある。
なお、加湿器の仕組みによっては、もともとある程度の空気清浄効果が期待できるものもある。
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